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シャットダウンについて

シャットダウンについて

こんにちは。本日はシャットダウンについて、記事を書きたいと思います。 そもそも、シャットダウンとは何なのでしょうか。

シャットダウンの定義。

人々が「シャットダウン」と口をそろえて指している状態は違う場合があります。この記事では以下の状態をシャットダウンされている状態として定義しました。

・PCの回路から電気が完全に抜けていて、メモリ上のデータがすべてクリアされた状態になっていること。 基本的にWindows10, 11の「再起動」、システム シャットダウン状態に一度入る動作をシャットダウンとして定義します。

システム シャットダウン状態 S5 - Windows drivers Microsoft Learn

状態 S4 の場合、コンピューターは休止状態のファイルから再起動できます。状態 S5 から再起動するには、システムを再起動する必要があります。

・Windowsの電源設定にある「高速スタートアップ」が有効な状態はシャットダウンとしては扱わない。

高速スタートアップ有効時に「シャットダウン」項目を使用してPCを終了する際はシャットダウン直前のメモリやCPUの状態を「hiberfil.sys」というファイルとして保存しています。起動時にファイルをロードしてメモリの状態を戻すため、メモリ上のデータはクリアされていないものと同様の状態になります。

休止状態からのウェイクと高速スタートアップの区別 - Windows drivers Microsoft Learn

高速スタートアップでは、休止状態ファイル (Hiberfil.sys) をメモリに読み込むだけです。 高速スタートアップでは、コールド スタートアップよりも大幅に所要時間が短縮されます。

シャットダウンを行うメリット。

上記を踏まえてシャットダウンを行うメリットを考えてみると、以下のような点が挙げられます。

・ソフトウェアに関連する不具合を解消・予防することができる。 メモリに展開されていたデータが完全に消去され、起動時にソフトウェアやドライバなどを一から読み込むので、メモリリークを解消することができます。

例えば、あるソフトウェア(例: CyberLink PowerDVD)を起動しようとした際に「すでに実行中です」というエラーが出て起動できないケースがあります。
タスクマネージャーでCPUの稼働時間を確認したところ3日以上経過しており、メモリ上に古いデータが残っている可能性が考えられました。PCを再起動したところ、ソフトウェアは問題なく起動しました。

・ソフトウェアの更新を適用することができる。 Windows Updateやドライバのアップデートを適用する際には、更新プログラムがシステムの一部を変更し、反映するために再起動が必要な場合があります。 メモリがリフレッシュされることにより、Updateなどの変更を行うことができます。

シャットダウンを行うデメリット。

シャットダウンを行うデメリットについて考えてみましょう。

・起動が遅い。 完全シャットダウン後、電源ボタンを押してから起動まで多くの工程が存在します。 POST→OSのロード→ドライバーのロード→サービスの実行→ログイン シャットダウンを行わない場合や、高速スタートアップを有効にしている状態ではOSやドライバのロードが必要なくなるため、完全シャットダウンした際に起動までの時間が長く感じる場合があります。 特に、HDDのような起動後の読み込みに物理的な時間がかかるストレージを使用している場合は大きな差が生まれる可能性があります。

・起動時、回路に負荷がかかる。 コンデンサーや各種コンポーネントへ一気に電流が流れる(これを突入電流といいます)ため、損傷する確率が上がります。 また、HDDやPSU、CPU Fanといった駆動部品に関しては特に初期動作時に大きな負担がかかります。 HDDに関しては、数秒間で7200回転/分までスピンアップを行うと考えると、当然負荷は大きくなります。

さらにいうと、電源投入直後、突入電流そのものによる負荷ももちろんあるのですが、電気エネルギーが熱エネルギーに変換されることによって、(冷却が追い付かないうちに)回路の温度が一時的に上昇することがあります。 回路の温度は瞬間的に80℃付近まで上昇することがあり、室温にもよりますが50℃程度の温度差が生じます。この際に素材やはんだが膨張、収縮を繰り返すことによってクラック(ひび割れ)を起こしてしまうことがあります。 ここでのポイントは温度差が生じることにあるため、PCが長時間高負荷状態にある状態よりもむしろシャットダウン→起動を行う際に負担が大きいことになります。 これも、シャットダウンを行うデメリットとして挙げることができるでしょう。

・故障率曲線について

故障率曲線

故障率曲線 - Wikipedia

上記の図は「故障率曲線」と呼ばれるものです。 ハードウェアを使用すればするほど故障率が上昇していることを表しています。 縦軸が故障率、横軸が時間を表しているのですが、時間が経てばたつほど、故障率(Failure Rate)が上昇していることが分かります。

・バーンイン工程について

上記の「Decreasing Failure Rate」と書かれている部分に注目してみると、PCを使用すればするほど故障率が下がるように見えますが、実際には異なります。 グラフの最初の部分で故障率が高い部分は製造直後の不良、いわゆる「初期不良」を表しています。 実際に工場で部品が製造された際には、一定時間の間、高負荷状態で動作させる「バーンイン工程」と呼ばれる工程を挟んでいます。 一般的には製造工程の最後に行われています。このテストによって、初期不良が発生した部品は除外されるため、市場に出回る製品については一定の品質が担保されています。 つまり、ユーザーが使用している製品については、「シャットダウン→起動を行えば行うほど故障率が上がる可能性が高い」という事実につながります。

まとめ

シャットダウンを行うメリット
・ソフトウェアの起動や更新を正常に完了させる目的では一定の効果が見込まれる。
・ソフトウェアの更新を確実に適用するにはシャットダウンを行うことが有効である。

シャットダウンを行うデメリット
・シャットダウン後、起動する際には各コンポーネントに通常よりも大きな負荷がかかり、寿命を縮める可能性がある。
・特に物理的に稼働する部品に関してはこの傾向が顕著にみられるため、HDD搭載のPCなどは不要なシャットダウン、起動を避けたほうがPCの寿命を延ばす可能性がある。

・重要なこと。
シャットダウンを行うことのメリットとデメリットそれぞれを理解したうえで、PCの状態や構成に合わせて適切な操作を行うことが最も重要です。
メモリリークが疑われる場合にはシャットダウンを行うことは有効ですが、そうでない場合、むやみに再起動を行うと原因がどこにあるかわからなくなってしまう可能性があります。

どちらが良い、悪いということではなく現象や状況に対して適切な判断を行う一助になれば幸いです。

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